アニメ筆の開発

Anime's Paintbrush

アニメ筆

アニメ筆_削用
アニメ筆 削用
アニメ筆_かすみ
アニメ筆 かすみ

品質と耐久性を兼ね備えた高品質な筆を求めて…

90年代に入り美術スタッフが使用していた絵筆が使いづらくなり、仕上がりに影響が出てきたことから、スタジオジブリでは、品質と耐久性を兼ね備えた高品質な筆を求めていました。そんな時、スタッフの方が全国の筆の約8割を生産する「熊野町」に注目され、その中でも日本画用筆の専門メーカーであった「松月堂」にご相談を下さいました。
「松月堂」としても是非プロに認められるアニメ用の筆を作りたいという思いがあり、アニメ用の筆の開発を行うこととなりました。

筆サンプルイメージ_縦1600

ミリ単位の形状と繊細な弾力

何度も試作品を作り、美術スタッフの方々と使用感など意見交換をしながら、品質改良に努めました。
筆の善し悪しは穂首に使用する毛の選別作業と、その毛をどの割合で組み合せ、どのような型にするかで決まります。それらの作業には熟練した伝統技術が必要です。その時々で変化する天然の獣毛を使用する為、安定した商品を作るためには長年の経験や勘が必要です。ミリ単位の形状と繊細な弾力及びまとまりを確保するのに「松月堂」の熟練した技術が活躍しました。 そして「アニメのプロフェッショナル」に満足いただけるアニメ用筆を完成させることが出来ました。これにより「松月堂」は伝統の技術を生かして、アニメという新鋭の分野に進出することが出来ました。

”ジブリの絵職人”男鹿和雄さん
松月堂の生産ラインを見学

平成22年3月筆の里工房「男鹿和雄の世界」開催に際して、松月堂に来社されました。

開発経緯の詳細

男鹿和雄さんの画集「男鹿和雄画集Ⅱ」の42Pに弊社アニメ筆が掲載されております。また138~139Pの、「背景美術の筆をめぐる、15年におよぶ試行錯誤」というコラムに削用筆に対する要求レベルの高さ、当アニメ筆の開発経緯が詳しく載っておりますので、ご興味がございましたら画集をご覧ください。

ジブリ THE ARTシリーズ
スタジオジブリ責任編集
男鹿和雄画集Ⅱ
ISBN4-19-862074-1

「かぐや姫の物語」

高畑勲監督作品「かぐや姫の物語」の背景画制作において、美術監督を務める男鹿和雄さんの指導により品質改良された松月堂のアニメ筆が、本作に使用されました。

現在および今度の取り組み

試行錯誤の上、ようやく実作業で使える筆が出来たと評価をいただいておりますが、理想とするレベルにはまだまだ改良の余地があり、引き続き理想の筆づくりに邁進するつもりです。芸術のプロに絶賛してもらえる、より高品質な筆を作るという大きな目標が当社のレベルアップの糧となっています。

今後の筆づくり

製造技術者の後継者問題、良質の原料及び竹軸等の部品の入手困難等多くの問題が山積していますが、筆は書道のみならず、美術・工芸・産業などいろんな分野に道具として使われており、筆が無くなれば、それらの分野にも大きく影響を及ぼします。だからこそ、決して筆づくりを絶えさせてはいけないのです。特に熊野筆業界が一丸となって後継者育成に全力を傾け、長年培った伝統技術を守り続けなければならないと思います。

海外のアニメ業界からも注目

 十数種類の毛の配合割合と穂先の形にノウハウがあり、アニメ筆として重要な要素となる穂先のまとまり、適当な弾力、色含みの良さ、しなやかな描き心地を実現するとともに、筆の寿命を延ばした点も評価されました。
 日本だけでなく、海外のアニメ業界からも注目を集めることとなりました。

第3回ものづくり日本大賞 中国経済産業局長賞 伝統技術の応用部門 受賞

第3回ものづくり日本大賞のパンフレットに掲載されたページをPDFで見る事ができます。

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