絵手紙とは、手紙の一種で文字通り「絵のある手紙を描いて送る」ものです。ここからは自論となりますが、要するに自分が描きたい絵が描ければよくて、描きたい線が引けるのであれば「筆でなくても」、鉛筆や割りばしでも何でも良いということですね!
おわり
と書くと、職人さんに怒られるので続きを書きます。基本的には、どんなものを使って描いても良いというのは変わりません。
では、絵手紙用筆とはいったい何のためにあるのでしょうか?!
突然ですが私(一応工場長)は絵が下手です。苦手です。
しかし!絵が得意・不得意に関係なく味わいのある絵が描ける!それが絵手紙用筆なのです!!!
どういうことかというと、綺麗に描こうとしても、写実的に描く力が低かったり絵が苦手な場合、描きたいように描けなかったり、粗が目立つ迫力が欠けるなど何か物足りない感じになりがちです。絵手紙はヘタなほうが良いと言われますが、実際に鉛筆などで書くと自分の力量に愕然としてしまいます。(注意:私の場合です!)
そこを補い、簡単に味わいのある線が誰にでも描けるのが絵手紙用筆なのです!
*ここまで自論なので気分を害された方見逃してください。
絵手紙について詳しくは、Wikipedia(絵手紙)などをご覧いただければわかりやすいと思います。
絵手紙用筆について
弊社は、絵手紙用の線を描く筆を三種類作っています。
絵手紙用筆H 茶軸
ETEGAMI-FUDE-H-brown
絵手紙用筆S 白軸
ETEGAMI-FUDE-S-white
絵手紙用筆 黒軸
ETEGAMI-FUDE-black
それぞれに違う描き味があるのですが、共通点は「線が下手になる」味わいのある線が描けるようになっています。
これは、門外不出の絵手紙用筆毛組表(レシピのようなもの)ですが、今日は思い切って公開してしまいます!
えぇ、ほとんどモザイクなのでごめんなさい。
え?字が汚い?今後気を付けます…
筆ごとに毛組表(弊社では400種類以上の毛組表があり、現行で製造しているものが約250種類あります)があり、この毛組表を元に筆を作っていくわけですが、この辺の話はいつか別の記事にしたいと思います。
毛組表左側には動物の毛の種類、真ん中あたりに量、右側に切り寸(長さ)が書いてあります。
硬さや太さ、含みの違う様々な動物の毛を混ぜ合わせる配合により、穂先が硬めで細い線を描きやすくしたり、ある程度押し付けると毛先が広がるようにしたり、筆ごとに色々と工夫しているわけですね。
絵手紙用筆の場合、穂先はまとまるようにしつつ、ある一定のところまで押し付けると広がったりカスレが出るようして、味わいのある線が引き出せるように工夫してあります。
この絵手紙用筆三種類の違いを簡単に説明します。
絵手紙用筆H 茶軸(ETEGAMI-FUDE-H-brown)
この筆は、他の絵手紙用筆よりも穂先が硬めで、筆を使い慣れてない方でも比較的簡単に安定した線が描けるようになっています。もちろん、綺麗な線になると味が出ないので適度に「暴れる」線の太さが変わるような作りとなっています。絵手紙に慣れた方には、暴れっぷりが物足りないことでしょう。ある程度慣れている人には、硬い質感の線描き筆としてもお使いいただけます。細い線などが描きやすいです。絵手紙用筆H 茶軸の「H」は、変な線が描けるハードの意味なんですね!
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筆使い達人の所感
「絵手紙の線をかく時は、この辺まで押さえて書くんじゃ!」という所で穂首が曲がって”固定”されるので、絵手紙を描いたことのない方が、線描きの所作に慣れるまでの感覚をつかむための矯正感がある筆。初心者の方には喜ばれるかも。
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さすが先生です。完全に設計思想を看破されました。下図は達人にささっと試し描きしていただいたものですが、実物は見た目よりも狭い範囲に渦が描かれています。私もトライしましたが、描けませんでした。
絵手紙用筆S 白軸(ETEGAMI-FUDE-S-white)
この筆は、茶軸よりも穂先が柔らかく、紙と穂首の親和性が高いため、大小さまざまな線が描ける反面、一定の太さの線を描くのにやや技術が必要となってきます。筆の使い方に慣れてきた方や、少し暴れ気味崩し気味な線を描きたい方にお勧めの筆です。絵手紙用筆S 白軸の「S」は、すごく変なs(いい加減しつこいと怒られそうなんで)ソフトのことですね!
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筆使い達人の所感
初心者じゃなくなったら、この筆は何も考えなくても勝手に紙に食い込んでくれるので、超便利。非常に幅広いユーザーに対応できる。手練れの人にとってはチート感(優位に描ける)がある。
しかしなんだが、描けば描くほど墨のススが筆に吸い取られていくのは何で?仕様なの?仕上げ糊のいたずら?
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さすが先生です。余計な高度な解釈で理解を超えます。少し使い込んでいただければオリは良くなりますが、仕上げ糊のいたずらということにしてください。下図は達人の試し描きですが、線の最後が薄くなっているのがススが吸い取られている状況を物語っています。見なかったこと使い込んでください。
絵手紙用筆 黒軸(ETEGAMI-FUDE-black)
この筆は、穂首全体が柔らかく、一定の太さの線を描くのにかなりの技術が必要となってきます。たまに自分で制御できない筆が欲しいという方がおられますが、まさにその方用の筆です。
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筆使い達人の所感
手元に半紙かティッシュを置いておいて、ちょっと先の墨の量を調整してから描き始めたら最強。ずっと紙に食い込み続けるし、墨も途切れないので、勢いのまま描き続けられる。ただし、初心者の言うことは、笑いが出るほどきかないでしょう。3種類の中で一番「思いもよらぬ動きをする」筆なので、楽しい!
思い通りにならないと”いらっ”とする人には白軸のほうが良いかも。
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さすが先生です。私には到達できない「ドM」世界に居られるようです。下図は達人の試し描きですが、こんな安定的な線、私には描けませんでした。
最後に
この記事を執筆するにあたり、ご協力いただきました筆使いの達人先生に対して、わたくしごときが失礼な言葉遣いをしておりますこと、お詫び申し上げます。また、この筆を作った天国におられる先代社長、こんな紹介をしてしまいごめんなさい!怒らないでください。